『生きている麹菌』(これは小説です)

『生きている麹菌』  警察は任意の事情聴取と称して、マネージャー氏の身柄を拘束、証拠隠滅を避けるためマネージャー氏は留置所入りとなった。留置所とはたちの悪い宿泊所のことである。  おまわりさんは言った。 「この端麗純米大吟醸酒を客にふるまったのはあなただけだ。犯人はまさにあなたで決まりである。毒をもったのはどういうわけか白状してはどうか。いつどんな毒を混ぜたんだ」  マネージャー氏は言った。 「わたしはなにもしていません」  おまわりさんは威圧的だった。 「状況を見たらどうだ。あなたと客がいて、日本酒を飲まなかったあなた以外みんな死んでしまったのだぞ」  マネージャー氏は懇願するように言った。 「おまわりさん、わたしは酒をふるまっただけですよ。残った日本酒は調べたんですか、毒があるかどうか」 「調べた。毒はない。さあ白状したまえ。いま白状すれば執行猶予もあるかもしれぬ。しかしそうでなければ永遠に刑務所暮らしだぞ!」 「黙秘権を使います」 「ほおぉ」  人を人とも思わない取調べが強行された。なにを言っても無駄である。マネージャー氏は心根いかれてしまった。  実は警察は現場で採取されていたわずかな日本酒の科学的鑑定を依頼していた。重大案件である。残ったわずかの日本酒を科学捜査研究所、いわゆる科捜研に送っていたのだ。  そして事件発生後一週間、サンプルのDNA鑑定をした科捜研の研究員は告げた。 「原因は野生の麹です」  おまわりさんはいぶかしげに、そしていさ…

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『CO2という利権(仮題)』(これは小説です。161105投稿)

  『CO2という利権』  生徒たちに何気なく、 「もし選挙権があったらどこに入れる?」と聞くと、  次の選挙では、 「自民党には入れない」という。  意外に嫌われているのだなと思った。  ついで本題である化学の授業で平衡の話――ルシャトリエの法則の説明である。たとえば圧力が上がったら圧力を下げるという化学平衡の原理(自然の摂理)。  ぼくは、 「自然はやさしい」というたとえ話で語った。「多すぎれば減らす方向へ、熱すぎれば冷やす方向へと、化学平衡は進む」  もちろん、化学平衡は人の営みではない。自然の働きである。  なのでぼくは角度を変えて環境について話した。 「地球温暖化を理由にCO2を減らそうなんて関係ない」というぼくの主張である。  火力発電はCO2を出すから地球温暖化の悪役として槍玉にあがっている。だからであろう、たいがいはじめてこの話を聞く生徒は意外な説を聞いたという顔をする。二度目のぼくの授業に来てくれている生徒はもう知っている、けれど今回次はどんな話の展開になるのかなって顔だ。  いま多少CO2が増えているのは、地球が(あるいはもっと大きな力が働いているのかもしれないが)、少なくとも言えるのは、 「自然界が植物を増やそう増やそうという意志のあらわれである」  世界を見れば、植物を人間があまりにも迫害して減らしているから、地球はバランスをとるためにいま必死になっているのである。たとえば必死になって植物を増やそうとしている。これはルシャトリエの法則と…

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